ぼくらの事情

その頃、日直と呼び出しを終えたコトになっている幼なじみたちは、



「あぁーっ。……響生の意気地ナシっ」



「あの顔は後悔してる顔だなぁ。……だから俺が言った通りにすれば良いのに」



絆が入ったと同時に徒会室の扉の隙間から、ずっとヘタレ響生を見守っていたらしい。



断じて覗き見ではない。



「だから! 架の言う通りなんてしたら、一発で嫌われるよ」



「なんで? 傷心の絆嬢を優しい言葉で慰めて、グラグラ揺れたところを後は一気に押し倒す……の何が悪いのさ」



「……架の歪んだ恋愛テクニックを響生にまで教えないでくれる?」



食えない爽やかな笑顔で言ってのける架に、咲奈の口からは深い溜め息が嫌でも出てくる。



「そうだね。女の子をテクニックで悦ばせるのは、響生にまだ教えてない」



「要らないよっ! 響生が汚れるっ!」



爽やかな笑顔にどす黒いオーラを醸し出すような男に教えられては、響生までが歪んでしまう。



嘘か本気かわからない、微妙なニンマリ笑いを浮かべた架に咲奈は慌ててストップをかけた。
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