ぼくらの事情
そんな響生を怪訝そうに見上げれば、
「だからっ、俺の分減らすなって言ってんだよっ。デザート」
自分のデザートを確保しようと、響生が真顔で訴えてくる。
その姿があまりに必死で、
「……ぷはっ」
絆はしゃもじを握ったまま、思わず吹き出してしまった。
何故笑われてるかもわからず、響生は眉を顰めながら首を傾げている。
「意外と響生って、食い意地はってるんだね」
無言でバクバクがっついてたと思えば、おかわりを要求し、挙げ句はデザートの催促。
良いトコの坊ちゃま育ちの人間とは思えない姿に、絆の口から思わず出た言葉がこれだった。
「…………」
食い意地はってる。
生まれて初めて言われた言葉に、響生は何やら言いたげに口をもごもごさせ、
「お家にシェフが居るって言ってたから、口に合わないかなって思ったんだけど……」
自分が差し出したお茶碗にご飯をよそう絆の手を、そのままガシッと掴んだ。
いきなり手を取られた絆が驚いたように響生を見上げれば、
「おまえが作ったからに決まってんだろっ」
案の定で顔を真っ赤にした響生が、声を張り上げていた。