ぼくらの事情

一人話が見えない玲於はただ変わらない笑顔を湛え、


「そうだね。さすがに小学生だからそれは無かったけど……」


写真に写るように隣の絆の手を握ったかと思えば、


「ここにはしたよっ。ねっ、絆?」


キュッと引き寄せた絆の頬にチュパッと、軽くキスしてみせた。


こいつワザと?

なんて幼なじみたちが思ってたその時、


「ヤバいっ」


響生の手にあった写真が握りつぶされそうになり、架が素早くそれを取り上げた。


空っぽになった手を握り締めた響生は、


「もぉ……玲於ってば人前で……」


軽く玲於を窘める絆の前に、ただ黙って立ちはだかったかと思えば、


「尻軽アホ女っ」


ツンツンに尖らせた唇で、小学生並みの悪口を吐き捨てた。


面白いからもうちょっと見てから止めようと目論む架と咲奈に、絆の傍らに居た玲於はただじっと響生を見つめている。


久々にアホ女呼ばわりされ、当の絆がポカンと口を開けたのも束の間、


「……尻軽ってどういう意味?」


プラスαされた言葉にムッと不愉快そうに顔をしかめた絆が、強い目つきで響生を睨み付けている。
< 144 / 191 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop