ぼくらの事情
一人話が見えない玲於はただ変わらない笑顔を湛え、
「そうだね。さすがに小学生だからそれは無かったけど……」
写真に写るように隣の絆の手を握ったかと思えば、
「ここにはしたよっ。ねっ、絆?」
キュッと引き寄せた絆の頬にチュパッと、軽くキスしてみせた。
こいつワザと?
なんて幼なじみたちが思ってたその時、
「ヤバいっ」
響生の手にあった写真が握りつぶされそうになり、架が素早くそれを取り上げた。
空っぽになった手を握り締めた響生は、
「もぉ……玲於ってば人前で……」
軽く玲於を窘める絆の前に、ただ黙って立ちはだかったかと思えば、
「尻軽アホ女っ」
ツンツンに尖らせた唇で、小学生並みの悪口を吐き捨てた。
面白いからもうちょっと見てから止めようと目論む架と咲奈に、絆の傍らに居た玲於はただじっと響生を見つめている。
久々にアホ女呼ばわりされ、当の絆がポカンと口を開けたのも束の間、
「……尻軽ってどういう意味?」
プラスαされた言葉にムッと不愉快そうに顔をしかめた絆が、強い目つきで響生を睨み付けている。