ぼくらの事情
負けじと睨み返す響生は、
「眠り姫だかなんだか知らねぇけど、浮かれてホイホイとキスされてんじゃねぇかっ」
腕組みしてふんぞり返ったかと思えば、盛大な舌打ちをかましてる。
「それはっ」
「眠り姫のコトなら、絆は入院したクラスメートの代役だったんだよ。体型も近かったし、台詞も少なかったからね」
慌てて反論しようとした絆より先に、相も変わらず無添加爽やか笑顔を貼り付けた玲於が口を挟んだ。
思わぬ笑顔での横槍に、響生の顔がにわかに渋いものになったかと思えば、
「因みに言っとくと、キスは僕から絆への気持ちだから。絆が尻軽なワケじゃないよ。響生」
サラッと笑顔でやり込められ、悔しげに下唇を噛み締めた。
隣で笑顔を絶やさない玲於に、完全に言い負かされて口を噤んだ響生を心配そうに見上げる絆。
視線が重なった瞬間、気まずげに目を逸らした響生は、
「……あっ」
そのまま生徒会室から出て行ってしまった。