ぼくらの事情
観音開きの扉の向こうに消えていく背中を、四人はただただ見送っているだけだった。
「はぁ……惨敗だね。情けないヤツ」
大袈裟なくらいの重い溜め息を吐いた架が、ワザとらしく渋い表情を作ってみせる。
ちょっとばかし心配そうに扉を見つめる絆の顔を、
「絆」
「えっ」
「僕はね、もう絆の寂しそうな顔なんて見たくないんだよ」
ギュッと握った手のひらの温もりと、優しい声色でアッサリと自分の方へと向けてしまう。
「これからはもう、独りぼっちで眠り続ける眠り姫になんてしないよ?」
強い孤独の中で上手く周りに心を開けなかった自分に、優しく手を差し伸べてくれた男の子。
あの頃、自分にとっての唯一の存在だった優しい手は、変わらず自分を安心させてくれる。
玲於を見つめ返す瞳の端に、響生が食べ残したシュークリームがチラリと視界を掠めていた。