ぼくらの事情
生徒会室を後にした響生が向かった先は、購買近くの自販機の前だった。
ミネラルウォーターのキャップを開けるなり、勢い良く口の中に注ぎ込む。
別に前のようにムラムラしてるワケじゃない。
むしろ、玲於にやり込められてどちらかというと、ムカムカイライラしてる。
それを鎮める為、クールダウンしてる……ワケでもない。
「健気だね。響生は」
「……はぁ?」
ペットボトルの三分の一を残し漸く口を離した響生は、チラリと視線だけで声の主を確認する。
「実は甘いの苦手なんでしょ? 絆の喜ぶ顔見たさに頑張って食べてる姿。ホント健気だよ」
いつの間にか背後に立っていたのは、爽やかな笑顔を湛えた玲於だった。
玲於の笑顔を一瞥した響生は再び前を向き、残りの水を飲み干して口の中に残る甘みを消していく。
「絆のコト好きなんだね」
「……悪いかよ」
「ううん。僕も同感だよ」
さっきから変わらない強張った顔の響生に対して、玲於は食えない笑顔で同意してみせた。