ぼくらの事情
「響生は絆に気持ちを伝えたけど、答えは貰ってない。それって……今は架や咲奈と同じ立ち位置で良いってことでしょ?」
淡々とした語り口と、真っ直ぐな眼差し。
自分のコトを聞かれているはずなのに、何故か頭の中はかき乱され、ゴチャゴチャと不明瞭になっていく。
「だったら、キミが嫉妬するのはおかしいよ。だって響生は、絆の特別になるコトを放棄したんだから」
「っ……」
違う。
玲於の言葉を打ち消すこの一言が、どうしても口から出て来ない。
澪路がそうであったように、自分も絆の特別になれたらと思った。
ただ、失恋して傷付いて……涙を流す絆に自分の気持ちを押し付けたくなくて、絆の傍で居場所を作ることを選んだ。
だから答えを貰わなかったのに……。
抑えていたはずの感情は、いとも簡単に自分をかき乱してしまったのだ。