ぼくらの事情
ちょっと声掛けてあげて?
こう言って咲奈は顔の前で手を合わせ、上目に絆の顔を窺っている。
「んー……でも」
申し訳なさそうに咲奈を見た後、絆はチラッと空っぽの教室に目を向けた。
その視線の先にあるのは、机の上にポツンと並べられた二つのカバン。
一個は絆がいつも使ってる手提げ。
もう一つは、
「玲於に話があるから待っててって……」
職員室に呼び出されている玲於のものだった。
またしても玲於が響生の前に立ちはだかる。
反射的に顔を見合わせた架と咲奈は、すかさず空いていた椅子に腰をおろした。
「玲於が戻って来たら生徒会室に連れて行くよ」
「うんうんっ。だから、ここちゃんは先に生徒会室行ってあげて?」
ここまでされたら断れるワケもなく、頷いた絆はゆっくりと生徒会室の方へと足を進めていった。