ぼくらの事情
「悔しいね」
「だから、もういい。もう、疲れた」
首に回された架の腕をゆっくりと払い、ふらつく足取りで廊下を歩いて行ってしまった。
「架……」
二人のやりとりをずっと後ろから見守っていた咲奈が、不安げに架の顔を見上げている。
「響生、本気だよ……」
その両手には、教室から回収してきた三人分のカバンがしっかりと握られている。
「……嫌いな甘いモンまで食べて頑張ってたクセに」
諦めを口にした幼なじみの背中を二人はただ、じっと見つめていた。