ぼくらの事情
夕日が差し込む廊下で、文化祭の準備で慌ただしい廊下の窓際で、
「……完全に僕の負けだね。僕じゃ絆をあんな風に笑顔に出来ない」
「…………」
窓ガラス越しに生徒会室に続く廊下を見つめていた人影。
その視線は優しく、そしてどこか寂しげにじゃれ合う三人を映していた。
「まぁ、正確に言えば響生も勝ったたワケじゃないけど」
くるりと身を捻り、窓に背を向けた玲於は隣で相変わらず三人を見つめる響生を窺う。
「はぁ?」
「だって、絆を笑顔にしたのは架と咲奈だよ」
目線だけで玲於を睨み付ける響生に対して、玲於はいつもの無添加で爽やかな笑顔を貼り付けている。
そんな玲於がもちろん気に入らなくて、響生はまた窓ガラス越しの光景に目をやった。
「…………」
架や咲奈の間で笑う絆から、ずっと目が離せないで居る。
傍らから響生を窺う玲於は、
「……で? キミはどうするの? このまま戦線離脱したままでいる?」
いつの間にか正面から響生を見据えていた。