ぼくらの事情

玲於にはああ言われたモノの、結局何一つ実行出来ていない。


情けないついでにもう一回、盛大なため息を零した響生の耳に、


「呼び出しします。美園沢 絆さん。至急理事長室まで」


最大にしていた生徒会室のスピーカーから、随分と聞き慣れた声が聞こえてきた。


理事長自らの放送での呼び出しはかなり珍しい。


息子である自分でさえ、そんなことをされた覚えは無かった。


「ねぇ。今ここちゃんが……って響生!?」


漸く走り回り役を終えて戻って来た咲奈の隣をすり抜け、響生は生徒会室から飛び出して行ってしまう。


「あんだけ走れるなら次からは、生徒会長サマ直々に走り回って貰うか」


咲奈の背後では、咲奈より一歩遅れて戻って来た架が呆れ顔でため息を吐いている。


そんな架を一瞥し、あっという間で取り残されてしまった咲奈も、ただ唖然と小さくなっていく背中を見つめていた。

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