ぼくらの事情
「事務所のコトは澪路が代理をする。……出来るね? 澪路」
「任せてください雅さんっ」
父親の肩を持つ気はサラサラ無い。
ただ、行く宛も無くさ迷っていた自分を拾ってくれた雅に恩返しが出来る。
そう思うと、澪路の中からは俄然やる気が湧いてくるのだ。
「だから、今日からは僕が雅さんと絆ちゃんを支えるよ。そしたら、雅さんは絆ちゃんの傍に居られるでしょ?」
「理事長さんっ!」
こう言ってチラッと目配せした理事長に、絆の乙女心は鷲掴み。
嬉しそうに手を叩き、笑みを浮かべる絆に、
「しょーがない。……お互い寂しく老いていく身なら、居ないより居る方がマシかもね」
それに……絆と過ごせるのも悪くないわ。
なんて付け加えた雅の顔は、満更でもない様に見える。
「ママっ!」
満面の笑みで雅に飛び付く絆に、澪路も理事長も微笑ましげに二人を見た。
こうして、全てが丸くおさまろうとしていたその時だった。
「ストップ!! ちょっと待て!!」
入り込む隙が無く、一人離れたところでくすぶっていた響生が、この大円団に待ったをかけた。