ぼくらの事情
ぼくらの事情
「……で、結局は事実婚って形を取ったワケか」
登校の準備を整えた架と咲奈は、揃って美園沢家の前にやって来ていた。
あれから一週間後。
理事長の動きはそれはもう、けたたましく早かった。
住んでいた家をさっさと売り払い、嫌がる響生を連れて美園沢家に越してきたのが、雅が病院に運ばれた翌日のコト。
「ここちゃんが結婚するまでは、ここちゃんママも理事長さんも籍入れないって約束したんだよね」
いつまでも渋り続ける響生に、雅が提示したのがこれ。
これなら、絆が例え相手に響生を選ぼうが選ぶまいが、綺麗におさまる。
なんてのは、建て前で、
「だいたい籍まで入れるつもり無いわ。だって私の一番は将さん(亡夫)と絆なんだから」
という雅の本音がそこに隠されていることは、理事長には絶対の秘密だ。
ついでに澪路が、
「だったら、俺が絆の旦那さんになっても問題無いんだ」
笑顔でこう言って、響生に夕飯をひっくり返させたっていうオプション付き。