ぼくらの事情
今まで散々に絆を甘やかし、可愛がってきた習慣は簡単になくなるワケもなく、
「もっと自立しろっ! 澪路の部屋で寝るな! 澪路に起こしてもらうな!」
「だってだって……これからはお兄ちゃんとして甘えて良いんだよって澪ちゃんが……」
玄関の前で向かい合った二人は、そのまんま堂々巡りな言い合いを始めてしまう。
「……つまり、澪路くんはここちゃんを妹って思ってるってコトになんで響生は気付かないかな~」
毎日毎日繰り返される光景に、毎度待ちぼうけを食らわされる方もいい加減痺れを切らし始めている。
「なんだかんだ言いながら、響生と絆が心配なんだね」
「いや。あわよくば邪魔してやろうって思ってるけど?」
こう言って無添加な爽やか笑顔を幼なじみたちに向ける玲於に、架は負けないくらい胡散臭い爽やか笑顔を貼り付けている。
「…………」
その傍らで、何故自分の周りにはまともな男が居ないのかを嘆くように、咲奈はため息を漏らした。