ぼくらの事情
「それに、澪ちゃんはお兄ちゃんだけど響生は違うよ」
「弟だって言いたいのかよっ」
誕生日が遅い分、家族内での位置付けが絆より下になった響生。
身長は俺が一番高い!って主張も軽く無視され、かなり苛立っていた。
「そうじゃなくて! わたしの一番は響生ってコト!」
あれやこれやと拗ねては突っかかってくる響生に、さすがに絆も痺れを切らして唇を尖らせる。
その度にこう言って宥めては、
「わっ!!」
不意打ちで響生にキスされる……が、ここ最近のお決まりのパターンと化している。
最初は面食らった三人も、毎日見せ付けられては慣れっこになってしまう。
「ハイハイ。この辺にしとかないと学校遅れるよー」
腕時計に目をやった咲奈が、門越しに玄関前で真っ赤になってる絆と満足そうな響生を促した。
「絆嬢は気付いてないけど、これって響生なりの宣戦布告だよな」
「やっぱりそうなんだ。響生って案外女々しいね」
揃って浮かべた爽やかな笑顔は、一瞬で不敵なモノへと変わっていった。
響生と絆が晴れて恋人となれるのは、まだもう少しだけ先のお話。
-FIN-