ぼくらの事情
いくら響生が理事長の息子でお金持ちのボンボンで、何でもこなせる優等生な生徒会長でも、
他人の気持ちに疎く、思いやりも欠落している。
幼なじみ二人の悩みの種だ。
「とにかく、絆ちゃんに嫌われる可能性が高いのは響生なんだから気を付けてよっ」
「はぁ? あのアホ女に嫌われたって痛くも痒くも無いな」
右からキャンキャン吠えてくる咲奈を退けるように背中を向ければ、
「そういう問題じゃないだろっ。絆嬢は今や俺たちの命綱なんだから。絶対怒らせるなよ」
待ち構えていた架がすかさず念を押してくるから堪ったもんじゃない。
「鬱陶しいなっ。とにかく好かれようが嫌われようが、要は毎日学校に行かせて成績を上げりゃあ良いんだろっ」
簡単に言えばそうなるが、ここで同意すればこの坊ちゃまは何をやらかすかわからない。
ましてや、絆の機嫌を損ねて理事長にチクられでもした日には三人して高校を追放されてしまう。
「架……咲奈、高校中退なんてイヤなんだけど」
「よく聞け咲奈。この女心のおの字もわかってないバカと絆嬢を二人きりにすんのだけは絶対避けること」
「ふむふむ……」