ぼくらの事情
本人の目の前でバカだの何だの言いながら、作戦会議を始める二人がハッキリ言って面白くない。
チッと舌打ちをかまし、何気なく振り返った先には、
「あっ……」
さっきまで居た二階の部屋から、こちらを覗き見る視線があった。
真っ直ぐに伸ばされた栗色の髪に、白い肌と細い手足。
モデルモデルと喚くだけあって、絆のスタイルはそれなりに美しく維持されていた。
俺が直々に面倒見てやる女なんだから当然だ。
まあ、ヨシとしてやろう。
それを思い出しながら、なんて頭の中で独り言を並べる傲慢男。
しかし、綺麗に整った顔はずっとむっつりしていて、ギスギスとさせた瞳が響生的にはすごく気に入らない。
そんなことを思いながら見つめていた視線が、ふっと一つに重なった。
カーテンの隙間から見えた瞳はやっぱりギスギスしていて、
「べーっ」
響生は右手の人差し指で、思い切りあっかんべーをかました。
一瞬、驚いた絆の顔はすぐさまカッと紅潮し、カーテンは閉ざされた。
「……ホントに可愛くねぇ女」
小さく呟いた響生はそのまま人差し指で眼鏡の端を直し、絆の部屋に背中を向けて歩き出した。