ぼくらの事情
「どうして理事長さんに?」
自分の通う高校に興味など皆無な絆としては、理事長はおろか担任の名前すら危うい。
そんな理事長との面識なんて、もちろんナシ。
それなのにわざわざ、一生徒の為にここまでする理由がわからない。
「そんなの、おまえの母親が理事長に頼んだからに決まってんだろ」
「んで、サポート役として俺たち生徒会役員に白羽の矢が立ったってワケ」
自分の母親が言い出しっぺと知り、絆の頭の中に申し訳無い気持ちが少しだけ湧き上がる。
やり方はムチャクチャっていうか、常識外れもイイところだが、理事長からのお願いで自分の時間を割いてくれているのは事実だ。
そう思うと、絆の三人に対する見方も若干変わってくるワケで。
「うちのママのせいで迷惑かけてるんだね……」
「えっ!?」
申し訳無さそうに目を伏せた絆に、架と咲奈の良心にズキズキと激痛が走る。
確かに理事長に半ば脅されてるとは言え、彼らがそれに黙って従っているのはそれなりの理由があるからだ。
百パーセントの善意からでも、生徒会役員の責任感からでもない。