ぼくらの事情
「どうしよ……ここちゃん、なんか勘違いしてるんだけど」
そもそも、架と咲奈がこの高校に通っている経緯自体が普通じゃない。
響生と違ってごく一般的な家庭に育った二人に、
「架と咲奈が一緒じゃないとイヤだ」
こう言って学園に入ることを拒んだ響生の一言で、近所の公立高校に通うはずだった二人の状況は一変した。
二人の両親に、学費は公立と同額にするという条件を持ちかけたのが親バカな理事長。
学園の名前が履歴書に書ければ箔がつく。
諸手を挙げて喜ぶ両親は二つ返事で了承し、めでたく三人は祝入学となったのが去年の春だった。
「そ、そんなに気に病まなくてもいいって、絆嬢」
「そ、そうだよー! 咲奈たちもここちゃんが学校に来てくれば嬉しいもんっ」
だって、退学にならなくて済むからね……。
なんて口が裂けても言えない。
どうせ真っ当な形で在学していない身。
こんな風に畏まられると、逆に気が引けてしまうのが正直なところだ。