ぼくらの事情
人懐っこい笑顔で話す架と咲奈は頼まれたとは言え、落ちこぼれの自分を案じてくれる優しい人間に見えるんだろう……。
ずっと堅かった絆の表情は少し和らいだように見えた。
「……わたしが学校に行ったら嬉しいの?」
「もちろんっ!」
同時に力強くハモった二人は、大きく首を縦に振っている。
多少良心は痛むモノの、このまま絆が警戒心を解いてくれれば話は早い。
「咲奈たちでバッチリここちゃんのことサポートするよっ! ねっ、響生?」
寂しがり屋の絆の心が、ジワジワと揺れ始めたその時だった。
「ヤだ」
絶妙なタイミングですっぱりと全否定した響生に、思わず咲奈と架の目が点になる。
「こんな可愛いげの無いアホ女の面倒なんて俺は嫌だっ!」
「わ、わたしだってこんな傲慢な人、嫌ですっ!」
立ち上がって見下ろす響生に、負けじと上目に睨みあげる絆。
見えない火花がバチバチな二人に、タジタジする咲奈の隣で、
「チッ……バカが」
さっきまでの笑顔なんて微塵も感じられない、さも鬱陶しそうに顔をしかめた架が大きく舌打ちしている。