ぼくらの事情
「絆嬢の様子は?」
「んー……とりあえず、咲奈が響生を突き飛ばしちゃったコトと響生に悪気が無かったコトは伝えたんだけど……」
部屋に駆け込むなり、大粒の涙を流し、
「お、お……」
「ここちゃん……」
両手で顔を覆い、むせび泣いている絆が気の毒になってそっと肩を抱けば、
「お嫁に行けないっ!」
「……はっ?」
耳まで真っ赤になった絆が涙声でこう言って、更に号泣し始めたと言う……。
「……まさか絆嬢もその類だったなんて」
「も?」
二人目の大勘違い人間に、またかと溜め息をついた架を咲奈が訝しそうに見上げる。
顎をしゃくって斜め後ろを差したのを目で追うと、
「やっぱり……責任取って嫁に」
「嫁っ!?」
真剣な表情でブツブツと呟く響生が居て、素早く架に視線を戻した。
「まさか響生も……?」
「責任取って結婚するんだって」
ニタニタ笑いの架は邪悪なオーラ全開。
「……で? ちゃんと違うって教えてあげたの?」
嫌な予感が頭をよぎった咲奈の顔は引きつり、どうか予感が外れるようにと密かに祈った。