ぼくらの事情

これ以上架に構うまいと、咲奈は咳払いを一つして響生に向き直る。


「どうやったら許してくれるかってコトだけど……。胸も唇も女の子にとっては大事なところだから」


しかも、相手がウブで純情な絆だけに尚更だ。


悪印象だった響生の印象は更に悪くなり、


「完全に嫌われちゃったね」


「…………」



自他共に認めるほどに嫌われたのは確かだ。


「別に、あのアホ女に嫌われても痛くも痒くも無いし」


「それっ! その言い方がそもそもの原因になってるんだよ!」



しかめっ面の響生にビシッと人差し指を刺さらんばかりに突き立て、


「いい? 女の子のハートは繊細なんだから貶したりしちゃダメだよっ。まずは、誠心誠意心を込めて謝って……」


腕組みをした咲奈はクドクドと乙女心のなんたるかを熱弁し始めた。


真正面で繰り広げられる演説会にさすがの響生もポカンと口を開け、呆気に取られている。



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