ぼくらの事情
「なぁ」
「ストーップ! ……架は邪魔しないでっ!」
背中越しに聞こえた架の声を手で制し、後ろを一瞥してまた響生に向き直った。
殺気立つ咲奈に圧倒された響生は、やや体を咲奈から反らしてさえいる。
「まぁ……そう言うなら仕方無いけどさ」
響生とは打って変わって、咲奈の右手で制された架は何でもない顔で頭を掻きながら、
「予鈴鳴ってるよ」
「…………」
遠くからチャイムの音が聞こえてることを、のんびりと呼び掛けた。
「さっさと言えっ!」
「だって咲奈が邪魔するなって言うからさ」
「それとこれとは別でしょっ!」
ヘラっと笑って見せた架を筆頭に慌てて駆け出した生徒会組を、
「……おはようございます、珍しいですね」
正門に立っていた風紀委員は驚いた顔で出迎えた。
「……理事長の野暮用でちょっとな」
理事長が響生の父親であることは伏せられており、
「お疲れ様デス! さすが会長……」
加治原先輩は優秀だから、理事長にも信頼されてるんだなぁ……。
文武両道優等生な生徒会長で通ってる響生を、風紀委員の彼は憧れの眼差しで見送った。