ぼくらの事情

当事者二人に至っては、せっかく忘れかけていたあの光景が頭の中に鮮明に蘇り、


「うっ……」


同じタイミングで顔を真っ赤にさせている。


しまいに、


「あっ! ここちゃんっ!」


恥ずかしさに耐えきれなくなった絆は手のひらをギュッと握り締め、この場から逃げるように走り去っていってしまった。



「架っ! せっかく響生がここちゃんに謝る気になったっていうのにっ!」


「ちょっとした冗談だろ、ジョークジョーク」


地団太でも踏みそうな勢いで怒る咲奈に、あっけらかんとした架の表情は更なる怒りを煽る。



「アンタ、ジョークの意味知ってる? 架のは邪悪だよ邪悪っ!!」


「それ、ダジャレ?」


「違う!」



今にもヒステリー寸前の咲奈を、小馬鹿にしたような笑顔で交わす架。



「落ち着け。怒ったら架の思うツボになるだけだろ」


怒り覚めやらぬ咲奈の肩を叩き、まるで他人事のように宥める響生に、



「そうそう。どうせ、響生が絆嬢に許してなんか貰えるワケないんだし」



嫌味っぽくニヤリと笑った架が吐き捨てるように言って、響生を一瞥した。


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