ぼくらの事情

屋上に続く階段の踊り場にやってくる大と小の人影は、


「とにかく、誠心誠意心を込めて謝るコト! わかった?」


「うっせぇなぁ……朝から何回目だよ、その話っ」



朝から十五回はされたであろうやり取りをしながら、階段をあがってくる。


「遅いっ。姫がお待ちかねだよ」


屋上の扉で待ち構えていた架が呆れた声で二人に言って、ドアノブを握った。



「いいっ? 誠心誠意……」


「わかったって言ってんだろっ!」


思春期の少年と母親の如きやり取りに見かね、


「わかってんだったらさっさと行けよっ」


「ぅわっ!」



ドアノブを捻った架は扉が開いたと同時に、思いっ切り響生の尻を蹴飛ばし、


「がんばってねー」


響生の宣言通り一分間のカウントが始まったストップウォッチを見せ、扉を閉ざしてしまった。



体勢を崩したのを何とか踏みとどまり、完全に閉じてしまった扉を恨めしげに見つめた響生が正面を向けば、


「……大丈夫?」


「っ!?」


ぶつかる手前のごく近い距離に絆が居て、躊躇いがちに声をかけてきた。
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