ぼくらの事情
六年ぶりに一緒に暮らすことになった母が、ふらっと連れてきた二十歳過ぎの若い男。
派手に染めた髪の毛と、華やかな顔立ちを下から見上げた絆の顔は酷くひきつっていた。
「まぁ、俺の場合は出会いが特殊だけど……それを差し引いても絆は内気ですからね」
「そんな性格でモデルがやりたいなんて甚だ可笑しいったらないわ」
「…………」
絆がモデルをやりたい理由は、華やかな世界にミーハーに憧れているワケではない。
口を尖らせて溜め息をついた雅を、澪路は黙って一瞥した。
「しょーがないわね。……あの人の手を借りるか」
ポツリと漏らすなり、雅は素早く鞄から携帯電話を取り出した。