ぼくらの事情
安い挑発に乗せられ、アッサリと全開になった扉から大声を上げながら飛び出してきた響生。
「ほらっ」
「…………」
懸命に扉の外から呼び掛けていた時間は何だったんだ……。
響生の思った通りの反応に満足そうに笑う架の隣で、脱力した咲奈が深い深い溜め息を零した。
「別にいーじゃん? 初恋が十七歳でも。まさか、あんなちょーっと優しくされただけでコロッと落ちちゃうとはさすがに思わなかったけどさ」
ベラベラと饒舌に回る架の舌を恨めしそうに睨みつけ、
「勝手なコト言うなっ! 俺は別に……」
顔を真っ赤にしながらいくら反論したところで、説得力なんて全く無い。
「別に……なに?」
口ごもる響生を嫌味っぽく笑う架がじっと見つめ、言葉を待っている。
……また響生の負けだな。
やり込められる響生に同情の眼差しを送り、そっと溜め息をつく。
不意に上げた視線の先に、
「あっ」
よく知った人物を見つけ、咲奈が手を振ろうと右手をあげた瞬間だった。