ぼくらの事情
とにかく誤解を解いて響生に謝らせねば……と、絆を追い駆けるよう促そうとしたその時だった。
「あっ、ここちゃん発見!」
廊下の窓越しについさっき見かけた背中を見つけ、
「おー……いっ?」
階段を降りるより早いと、廊下の窓を開けて呼び止めようとした三人の目に、
「あっ!」
「っ!」
「おーっ」
校門で待ち構えていたスーツの人影に、嬉しそうに駆け寄る絆の姿がバッチリと飛び込んできた。
スーツの彼は駆け寄ってきた絆の頭を大きな手のひらで撫で、撫でられた絆も一層嬉しそうに笑っている。
そのまま絆はスーツの彼にピタリと寄り添い、仲睦まじげに学園の門を後にした……。
「……短い春だったな。響生」
「だ、大丈夫だって! ここちゃんだけが女の子じゃないよっ響生」
「勝手に慰めんなっ!」
肩をポンポンと叩いて薄い笑いを浮かべる架に、ワザとらしい明るい声で励ます咲奈を鬱陶しそうに響生が払いのける。