ぼくらの事情
「自棄になるなよ。初恋は実らないのがセオリーだろ」
「それに、失恋って人を成長させるっていうし……」
失恋を前提とした勝手極まりない慰めの言葉に、
「だからっ! 勝手に失恋にするなっ! まだ彼氏って決まったワケじゃ……」
思わず勢い任せに言い返したところで、自分の口をパッと右手で塞いだ。
マズいと書いた顔でゆっくり視線を幼なじみたちに向ければ、
「…………」
案の定、にたーっとネチっこい笑顔で何か言いたげに自分を凝視している。
それもそのはず。
こんな言い方をしたらまるで……、
「やっぱり好きなんだー」
って、自分から認めているようなもんだ。
声を揃えてされた指摘に響生の顔は、見る見るうちにぶわっと赤くなっていく。
無言は肯定。
観念したように口を噤んだ響生に、
「初恋おめでとう響生ー!」
「目指せ略奪愛、泥沼修羅場!」
やんややんやとはやし立てる咲奈と架を一瞥し、響生は二人から視線を逸らした。