ぼくらの事情


「だって! 響生がここちゃん呼びに行くって言って十分以上も扉の前から動こうとしないんだもんっ」


「ぅっ……」


昨日、絆を迎えに来ていたスーツの彼の正体を探るべく、昼休みの生徒会室に呼び出す計画を立てたまでは良かった。


「俺が呼んで来るっ」


何を思ったのか。
自ら絆を呼びに行くことに名乗りを上げたのが響生。


そこまで言うならばと、響生に絆の呼び出しを託したものの……。



五分経っても、十分経っても扉の前から一歩も動こうとしない。


とうとう痺れを切らせた咲奈が、こうして初めてのお使い的な演出で送り出そうとしていたのだった。



「自分で言ったんだからちゃんと実行しろよ意気地なしー。父さんはそんな子に育てた覚えは無いぞっ」


さっきまで知らん顔だった架が、お弁当の唐揚げをモシャモシャと食べながらこう言えば、



「ママだってそんな覚え無いわっ」



「……おまえらが親だったら一生反抗期終わんねぇだろな」



咲奈がそれに便乗して、鬱陶しさは五割増しに跳ね上がった。



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