ぼくらの事情
「い、今行こうと思ってたんだっ」
あくまでも自分の足で絆を呼びに行こうとしたことは譲れないらしい。
「はいはい。わかったから早く座りな」
「絆嬢ー。それ俺の」
「違う。わたしのだよっ架くん」
いつの間にかソファーに着席した自分以外は、テーブルに広げたお菓子を突っつきながら和んでる。
架に至っては、自分を差し置いて『架くん』なんて呼ばれてるから面白くない。
っていうか、いつの間にアドレス交換してんだっていう話だ。
「…………」
それらの一つとして口に出せないヘタレ男は、ただムッツリと唇をへの字に曲げて絆の隣に腰を下ろした。
「これ美味しい」
「こっちも美味しいよーここちゃんっ」
横目に盗み見る絆は、自分以外と楽しげにお菓子の話なんてしてるから腹が立つ。
「あっ、響生は何飲む?」
「昨日の男は誰だ」
「えっ!?」
この和みムードでほっこりした生徒会室の空気なんて完全に無視した生徒会長は、
「だからっ。昨日、校門のところに居たスーツの男は誰だって聞いてるんだよっ」
呆然とチョコスナックをくわえた絆の顔をじっと見つめていた。