ぼくらの事情
「これは?」
「調査書……とでもいうのかな。ちょっと成績のところ見てくれるかな?」
理事長に言われるままに調査書と呼ばれた書類の項目には、一般生徒には絶対公開されないようなものばかりが羅列している。
「成績も出席日数も下から数えた方が早いですね」
「そうなんだよ。これでもウチの学園は優秀な高校で通ってるからね」
言った瞬間、ずっと穏やかだった理事長の顔に少しばかり渋いものが見え隠れする。
「それで? この落ちこぼれを切り捨てるんですか?」
「いや。しないよ? 大事な大事な生徒さんだからね」
「しかし、成績だけならまだしも、出席日数が足りてないのはもう……本人にやる気が無い表れかと」
なかなか話の核心に触れて来ない理事長に、彼もだんだん痺れを切らし始めていた。
無駄なら切り捨てれば良い。
やる気が無いのなら尚更だ。
そう思って手に持っていた書類を返そうとしたその時だった。
「無駄だからって切り捨てるのは簡単だけど、やる気を出させるのは難しいもんだよ。加治原くん?」
「はぁ?」