ぼくらの事情
「ちょっと架っ! まだフラれたワケじゃないでしょっ! なのにフラれるフラれるって……ホントにフラれたりしたらどうするのっ!」
「フラれるフラれるって連呼してるのは咲奈の方だろー」
「うるせぇなっ! 何回言う気だっ!」
響生を庇ってんだか庇ってないんだかわからない咲奈の言い方に、揚げ足を取る架。
どっちもどっちって言葉は彼らの為にあるんじゃないかってくらい、大差ない二人にキレたのが当事者の響生だ。
「言っとくけどなぁ……俺はフラれてないっ!」
響生渾身の雄叫びが、爽やかな朝の空に響き渡った頃だった。
「五月蝿い……」
久々の家族揃っての食卓で、絆が淹れたコーヒーを啜っていた雅の眉間に一瞬にしてシワが寄った。
「朝っぱらから他人様の家の前で騒ぐなんて……良い度胸してるわね。どこのガキんちょよっ」
片手に持っていた朝刊をぐちゃりと握り締め、今にも叩き付けんばかりの勢いだ。
「この雅様が一言ビシッと言って来るわっ」
「もぅ……ママってば大人気ないよ」
椅子から立ち上がろうとする雅を、キッチンからお弁当の用意をしていた絆が慌てて止めに入った。