ぼくらの事情
そこで出会った架と咲奈があの頃と変わらず、響生の傍に居てくれているコトが澪路は嬉しかった。
「澪路くんなんでここに居るの?」
記憶の中よりずっと女の子らしくなった咲奈が、当時と変わらない口調で首を傾げている。
「雅さん……絆の母親に拾って貰ったんだよ」
「親父さんの伝で?」
幾分、鋭さの増した架の瞳に首を振り、
「違う違う。たまたまスカウトされたの。雅さんの事務所に」
そこで母の旧姓を名乗って働き始めたコトを告げ、響生の顔色を窺った。
さっきから変わらない顔で澪路を見つめる響生は、ずっと口を噤んだままだ。
「響生……」
「澪ちゃん? 何してるの?」
澪路が響生を呼ぼうとしたその時だった。
なかなか戻ってこない澪路の様子を窺いに来た絆が、ひょこっと玄関から顔を覗かせた。
「あれ?」
すっかり小学生が居るものだと思っていた絆は、澪路の背中越しに見えた見慣れた三人組に不思議そうに首を傾げる。
「絆のコト迎えに来たって」
「なんだぁ。澪ちゃんがなかなか戻らないから心配したのに」