ぼくらの事情
ずっと拳を握り締めていた傍観者その一が、
「ちょっと、響生っ」
何を思ったのか、傍観者と新婚夫婦の境界線をズカズカと乗り越えていく。
そして、
「ぅわっ!」
ずっと澪路の方を向いていた絆の腕を取り、自分の方へと引き寄せた。
「ひ、響生?」
突然引っ張られた絆が、反射的に響生の方を見上げれば、
「俺の前で他の男を見るなっ!」
物凄い不機嫌面で自分を見下ろしてる響生が居た。
「……出た。無意識で口説いてどうすんだ。バカ響生」
「大丈夫だよ。二人とも鈍いから意味わかってないよ」
澪路とのイチャイチャが気に入らなくて突発的に言った本人に、キョトンとする絆。
案の定、言葉の意味なんてわかってない。
ただ、
「へぇ……。絆が言ってた生徒会長っておまえだったんだ」
目の前に居た澪路は響生の絆に対する態度に何やら思うとこがあるらしく、ニヤリと不敵な笑みを浮かべてる。
そして、
「がんばれよ」
ポンと響生の肩を軽く叩き、澪路は玄関の中へと戻って行ってしまった。