ぼくらの事情
澪路の余裕あり気な態度が響生の癇に障り、どんどん不機嫌指数を上げていく。
「ねぇ……響生」
「なんだよっ」
澪路の顔と言葉を思い出し、すっかり仏頂面になった響生に、
「いつになったら手離してくれるの?」
斜め後ろから遠慮がちに声を掛けた。
「えっ?」
その声で我に返った響生が視線を手元に落とせば、ガッチリ絆の白い手を掴む自分の手があった。
「は、離せっ!」
「響生が繋いで来た癖に……」
とっさに手を振り払った響生の態度に、絆はムッとして唇を尖らせる。
「おまえが澪路の前でヘラヘラしてるからだろっ!」
「響生。それじゃあ澪路さんのコトで八つ当たりしてるの丸出し」
「気にしなくて良いよ、ここちゃん。響生は澪路くんにヤキモチ妬いてるだけだから」
架に頭を叩かれ、咲奈にカッコ悪いと罵られる。
いつもの三人のやりとりに、絆は何故だか驚いたように響生たちに目をやった。
「澪ちゃんのコト……知ってるの?」
それを怪訝そうに見つめ返す三人に問い掛けた絆は、
「澪路は俺の兄貴だ」
響生から返ってきた答えで、完全に動きがフリーズしてしまった。