ぼくらの事情

「咲奈たちもビックリしたよ。五年前にふらっと居なくなったと思ったらここちゃんの家に居たなんてさ」



五年前といえば、ちょうど雅が澪路を家に連れてきた頃だ。



行くところが無いと聞いていただけに、澪路には身寄りが無いのだと思って家族の話なんて触れたコトが無かった。



「響生が……澪ちゃんの弟」



それがまさか、こんな形で再会するコトになろうとは響生たちはおろか、澪路自身も夢にも思っていなかった。



「違うっ。澪路が俺の兄貴なんだっ！」



澪路の弟と呼ばれるコトが気に入らないワケではない。

ただ、絆が絡むとなれば話は別。

あくまでもメインは自分じゃないと気が済まないのだ。


「どっちでも一緒でしょ」


「大違いだっ」


響生が熱くなってる理由もわからず、些細なコトに拘る姿を絆は呆れたように見やっている。




「拘りたくもなるよね。五年ぶりに再会したら強力な恋敵だったなんて……」


「大好きな澪路さんの弟ってだけでも響生にはマイナスだよなー。比べられたら一発で響生の負けだよ」



呼び方一つでムキになる響生に、幼なじみたちは一歩後ろから哀れみの眼差しを送っていた。