ぼくらの事情

「やっぱりそうだよね……。澪ちゃんは響生のお兄ちゃんだもんね」



澪路の代わりに自分が傍に居る。

だから、澪路を自分に返して欲しい。



これが響生の言葉を聞いた絆の解釈らしい。



上手く伝わらない自分の気持ちに、もどかしそうに唇を閉じたり開いたりしてる響生のアホ面が情けない。



「決めたよっ。わたし、澪ちゃんにちゃんと伝えるっ」


「はぁ?」


「だから、澪ちゃんが響生の家に帰って離れ離れになっても後悔しないようにちゃんと気持ち伝えるよ」



何に勇気づけられたんだか、こう言って張り切る絆がいそいそと勉強道具を片付け始めた。


そして、


「ありがとう響生」


晴れやかな笑顔を残して、絆は颯爽と生徒会室を後にしていくのだった。




一人生徒会室に残された響生は、ただ呆然と絆が座っていた場所を見つめていた。



「……言葉って難しいな。響生」


「せっかくドッキドキ二人きりの勉強会大作戦だったのにね……」


絆と入れ替わりに入ってきた幼なじみたちは、どこから見ていたのか全てを悟りきったような顔をして響生の肩を叩いてる。
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