ぼくらの事情
「キミたちー」
「へっ?」
暗い面持ちの響生を先頭にゾロゾロと歩いていた三人の背中に、如何にも怪しげな声が掛けられた。
反射的に振り向いた咲奈に、
「ジュース奢ったげるからお兄さんとお話しない?」
「バカ。振り向いたらダメだろ。無視無視」
満面の笑みを浮かべた澪路が、コンビニの袋を掲げながら立っていた。
「でも架、澪路くんだよ」
「わかってるよ。だから無視しろって言ってんの」
立ち止まって澪路を指差す咲奈の襟を掴み、前に進むように架が促している。
その声も様子も全部見ていた澪路は、苦い笑いを浮かべた。
「架は五年の間に性格がひん曲がったみたいだな」
「五年間も弟をほったらかしにしてた人に言われたく無いですよ」
今朝、美園沢家の玄関前で散々イチャついて待ちぼうけを食らわされたコトを根に持っていたらしく、後ろに居た澪路を一瞥する。
「耳が痛いよ。……で、響生はなんで沈んでんの?」
「アンタのせいだよ」
「もぉ、架……」
あまり反省の色が見えない態度が更に気に入らなかったらしく、ガンガン突っかかっていく架を咲奈が小さく窘めた。