ぼくらの事情

「そう言ってくれると安心だな。絆は俺が居ないとダメだから」



安心したように笑ってみせる澪路の口からポロッと零れた言葉に、思わず三人の顔色が渋いものになっていく。


響生に至っては、


「おまえ、何のつもりだっ!」



自分が絆にとっての特別であることを自覚して、まるで自慢しているようにさえ聞こえるから腸が煮えくり返りそうになっている。



不愉快と顔に思いっ切り書いてある響生を逆撫でするかのように、


「だって、絆には俺しか居ないから」


「…………」


躊躇いなく続けていく澪路に、響生の表情はどんどん苛立たしげに変わっていく。


「でも、それじゃダメなんだよ。絆は俺に依存してる」



しれっとした顔で言ってのけた澪路に、


「響生ー。押さえとくから五、六発殴っていいぞ」


「よしっ」


架が言いながら背後に回り、澪路の両腕を力一杯握り締めた。


ならばと拳を構えた響生に、


「ダメダメ! 制服で暴力沙汰になんてなったら補導されるでしょっ」


「……咲奈まで」


咲奈が慌てて止めに入ったものの、理由が自分を庇ってくれたワケじゃないことに澪路は軽く傷付いたらしい。
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