ぼくらの事情
気が付けばあの家で、響生は独り取り残されていた。
そして唯一残った父親が望んだように学園に入り、文武両道な生徒会長を務める今の響生が出来上がったのだ。
「アイツがおまえと居たいって言ったんだっ。だったら……アイツ自身は俺たちと居るコトを望んでないだろっ」
絆の気持ちを無視してなされる澪路からのお願いを、響生はどうしても受け入れられそうにない。
「じゃあ、響生は良いのか? 絆が俺を選んでも」
「……嫌だけど、アイツが望んでるなら」
ポツリと呟いた響生の言葉に、思わず澪路は目を見張る。
響生から返ってきた答えは、家を出る自分に言ったセリフと同じだった。
「嫌だけど、澪路が望んでるなら」
そう言って響生は、澪路の背中を見送ったのだ。
「響生は変わらないな」
本人が望んでいるコト。
響生は誰より、それを大切に思っている人間だ。
だからずっと、両親に望まれるままに育ってきた。
そして、反発する澪路の気持ちも認めてきたのだ。