ぼくらの事情
澪路が立ち去った後、三人は何を言うでもなくただその場に留まっていた。
「架ー。機嫌直しなよ」
珍しく不機嫌な架は、後味悪そうにしかめっ面をして地面を睨み付けている。
それに見かねて咲奈が声を掛ければ、
「……こうなったらさ、澪路さんにフラれて弱ってるところにつけ込もうぜ」
「……つけ込む?」
「だから、傷心の絆嬢を優しい言葉で慰めてだなー」
響生に何やら良からぬコトを植え付け始めた。
その光景を呆れ顔で見つめていたものの、
「優しい言葉でグラグラ揺れたところを後は一気に畳み掛ける」
「畳み掛ける?」
「つまり……一気に押・し・倒・せっ!」
「架っ!」
響生が無知なのを良いコトに、ムチャクチャな技の伝授をしようとするから油断ならない。
「そんなコトしたら一気に嫌われるよ! ダメだよ響生」
「大丈夫大丈夫。響生は絆嬢を既に一回押し倒してるし?」
「ばっ! だからアレはっ!」
「はいはい。事故だろっ、事故」
もう幾度となく言われてきたネタに、それでも真っ赤になって否定する響生が面白くて仕方ないらしい。