影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
序章
時は天正六年(1578年) 二月。

世の中は各地の大名がその覇を争う戦国の真っ只中。

その趨勢は定まり切らず、国々で武を、智を、技を誇る剛の者達が争っていた群雄割拠の時代…。





伊勢松ヶ嶋城。

どこの国にも存在する戦国武将の住まう居城がここにあった。

城主は北畠信雄。

かの織田信長の子である。

その天守閣。

信雄の御前にある男の姿があった。

「…まことであろうな、その話」

「お恐れながら…」

男は恭しく下げた頭を上げる。

その表情には、笑み。

策謀と狡猾さが滲み出た、笑み。





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