影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-

百合

無手。

得物は何も手にしていない。

にもかかわらず、初代は甲斐様に襲い掛かってきた。

『忍者八門』の中に『骨法術』というものがある。

現代では骨法と言えば格闘技の一種を指すらしいが、忍者八門では素手での戦闘術、即ち格闘技全般を指す。

初代も伊賀の上忍だ。

骨法術くらい当然会得しているだろう。

とはいえ、甲斐様も中忍だ。

しかも忍者刀を握っている。

素手で忍者刀を持つ中忍相手に真っ向勝負とは、如何に初代といえども苦戦は免れないのではないか。

そう思っているうちに、甲斐様は忍者刀を振るった。

実の父親に対し、大上段から刀を振り下ろす!

それを。

「!?」

初代は両腕を交差させて受け止めた!

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