影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
ほぼ天下統一を目の前にした信長の目下の敵は、中国の毛利氏、四国の長宗我部氏、北陸の上杉氏、九州の島津氏のみ。

まさかこの段になって、獅子身中の虫にやられるとは信長も思いもしまい。

…いや、だからこそ戦国の世は油断ならぬのだ。

如何に足元を固めようと、いつ寝首を掻き切られるかわからない。

ましてやその首を掻き切るのが、己の配下や数年前に仕留め損ねたくのいちなどとは夢にも思うまい。

「では…頼んだぞ、毒百合」

男が去っていく。

…私は一人山林の中、苦無を固く握り締めた。

…百地様、甲斐様…。

仇の一人、まずは百合めがこの手で屠って見せます…!


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