影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
殆どの部屋は、確認するまでもなかった。

完全に炎に巻かれてしまっている。

襖を開いて室内を見るどころか、その襖そのものが炎で燃え落ちる。

仮にこの襖の奥に信長がいるとしたら、既に焼死体だろう。

まだ辛うじて火の手が迫っていない部屋のみを、素早く確認していく。

…凄まじい炎。

いよいよ呼吸も苦しくなってきた。

頭巾で口元まで覆い、水遁の修練で呼吸停止に慣れている私でさえ、この燃え盛る建物の中での行動は難儀だった。

並みの者ならば呼吸困難により事切れているやもしれぬ。

そんな状況の中。

「!」

私は室内から人影が伸びているのを見つけた。



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