影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
手にした苦無を握り締め、構える。

遂に…遂に見つけたぞ、織田上総介信長。

この手で仕留める。

そして、伊賀忍軍同胞の仇を…!

そう勇んで室内に飛び込んだ私は、思いがけないものをその場で見る。

「う…ぐぅうぅ…ぬぅ…」

恐らくは室内で交錯したのであろう、信長ともう一人の人物。

信長の手には脇差が握られていた。

下段から斬り上げたのであろう、その構え。

しかしどうやら、その刃は虚しく空を切ったようだ。

代わりに信長の胸には袈裟懸けに刻まれた刀傷。

深い。

最早手当ても手遅れなほどに、信長の着物は真紅の血に染まっていた。

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