影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
その信長と剣での交錯をした者。

それは信長の背後に立っていた。

まさしく袈裟斬りを放った直後の体勢。

右手に握られているのは刀だった。

ただの刀ではない。

刀身は短めで、反りもない。

私達隠密には馴染みのある刀剣。

それは忍者刀だった。

その者が身につけているのは、所々ほつれ、擦り切れ、破れた藍染の装束。

そして顔を覆う同色の頭巾。

その頭巾が。

「!」

ハラリと畳の上に落ちた。

流石は信長、手傷は負わせられたものの、只では斬られなかったという事か。

「見事…うつけ殿。しかし」

聞き覚えのある声が響く。

「お命は頂戴する。我が伊賀忍軍同胞の仇としてな…」

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