影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
退路が完全に炎に包まれる前に、私と甲斐様は本能寺から脱出した。

脱出しながら、これまで甲斐様が何をしていたのかを聞く。

…初代によって断崖へと落とされたあの日。

甲斐様は確かに激流に飲まれた。

滝壺へと落下し、渦に巻き込まれる。

その中から浮かび上がれたのは、まさに偶然であり奇跡だった。

辛うじて一命を取り留めたものの、完全に私とはぐれてしまった甲斐様。

その後は私と同じく、暗殺や依頼者の命令による潜入任務などで金を稼ぎ、食い繋いでいたのだという。

…その過程で、散り散りになった伊賀の同胞達数人とも再会を果たした。

その同胞達と情報交換をしつつ、甲斐様は今日という日を知ったのだ。

信長に謀反を企てた、明智光秀の存在。

その機に乗じ、彼は信長の暗殺を決行した。

形は違えど、私と同じ事を考えていたのだ。

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