影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
そんなある日の事。

「え?徳川家康に?」

深夜の山中。

野宿の準備をしていた百合が顔を上げる。

「うむ」

俺は頷く。

「昼間に仲間からの五色米による暗号を見つけてな…現在伊賀の生き残り達が、家康の下に集結しているらしい…半蔵様の呼びかけのもとにな」

服部半蔵。

後世にまで名を残す大隠密で、服部、百地、藤林といえば伊賀の『上忍御三家』と呼ばれるほどの名家だ。

正式には服部石見守正成(はっとりいわみのかみまさしげ)という。

この服部正成は没するまで徳川家康に仕え、武将として様々な武功を打ち立てたといわれている。

服部正成はなぜ「服部半蔵」を名乗っていたのか。

服部氏というのは、伊賀の出で百地、藤林に並ぶ伊賀忍者の頭目であった。

遡れば、服部氏の祖先は聖徳太子が大伴細人と共に使っていた「志能備」であったとも言われている。

このように、由緒ある忍者の血統である服部氏の頂点に立つ者が受け継ぐのが「服部半蔵」の名。

つまり、「服部半蔵」は世襲制の役職なのだ。

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